眞一郎は蛍川高校の男子バスケットボール部に所属する4番の男、つまり石動 乃絵の兄である石動 純との接触があった。
その始まりは、眞一郎宅への純からの来訪により起こり、
『 乃絵と付き合ってやってくれ。 』 という眞一郎にとっては意味不明で
疑心暗鬼するような仄めかした言葉を純は残して去ったのだ。
だが、その言葉自体が嘘偽りないものなのだから、事態を更にややこしくする。
純は眞一郎のその答えを聞く為、翌日の夜に再び、眞一郎の自宅へと赴く。
そこで、純は眞一郎に答えを問うのだが、眞一郎はそのあまりにも身勝手さに腹が煮えくり返るような想いで、言葉として純に
浴びせてしまう。
『 あのさぁ…、人の気持ちを勝手に操作しようとするのは、どうかと思うよ! 』しかし、純はなおも冷静沈着の趣で眞一郎に返した。
『 そんな?大袈裟なこと?じゃないさ。 』眞一郎はその言葉に激怒する。
『 それじゃ、俺が石動 乃絵と付き合う代わりに、アンタに?比呂美?と付き合ってくれ、と言ったらどうする!? 』その言葉に純は驚きの表情を見せる。
眞一郎は純にだって、ああいう?
願いごと?をされたら、やはり戸惑うということを実感し、一瞬だけ強気に転じた。
だが…、純は見事なまでに冷静沈着ぶりを見せていた。
純は比呂美のこと、つまり?
6番の女子?としてでしか認識していなく、全くもって無関心なものであったのだ。
仕舞いには、眞一郎が?
比呂美?と口にしていることから、純は眞一郎が比呂美のことに興味を持っている、名前で呼び合う
関係の中であることを悟られてしまった。
同時に、その?
比呂美?と付き合えば、眞一郎は乃絵と付き合うという約束を果たしてくれる、と宣言されたものだと
確信してしまったのだ。
『 あぁ…、お前んとこの6番か。 可愛いよな・・・・・・あの子。 』純は眞一郎にそう言い残し、再び去ってしまった。
眞一郎は純に翻弄されながら、事態を大きく複雑にしていったのであった。
これが、その背景。
眞一郎は比呂美が4番の男を好きであるということを本心から想っていると誤解していた為、ついつい比呂美におせっかいの行動に
出てしまった訳である。
4番の男が比呂美のことを?
可愛い?と言っていた、その何気ない言葉が比呂美の逆鱗に触れてしまったということである。
そして、そのおせっかいの行動の直前の出来事、比呂美の友人である黒部 朋与から一通の携帯メールが彼女の元へ届く。

この内容を見た矢先、あの出来事が起こってしまうのだから、比呂美の心は?
荒れ模様?になっていたのは言うまでもない。
その夜、外の景色もまた…荒れ模様となり始めていった。
【 仲上夫婦と湯浅夫婦 ?切り取られた想い出? 】
仲上夫婦と湯浅夫婦との過去の想い出、一枚の写真。
現在では、その面影もないくらいにみすぼらしい写真へと成り果てていた。
湯浅 比呂美の母の写真の顔部分だけが、?
スベテ?の想い出において、切り取られていたからだ。
湯浅 比呂美と仲上 眞一郎の母との?
確執?の秘密の原点は、ここに在った。
眞一郎の母にも過去に?
笑顔?があったが、現在ではその笑顔のエの字も無い。
笑顔がなくなった原因の全ての始まりが、今…一枚の写真にて語られようとしていた。
【 出逢い=単純 ?想いはフンワリ軽い? 】
眞一郎と乃絵との出逢いは、実に単純なものであった。
乃絵は眞一郎の?
ホントウの涙?を確かめる為に、彼の行動が?
ホンモノ?であるかどうかを確かめ始めていった。
眞一郎は踊りの稽古があり、それで放課後、乃絵と一緒に帰ることが出来なかったという?
断られた願いごと?の真意を
確かめる為に…。
その前後関係には、乃絵の優しさも含まれていた。
乃絵は眞一郎が断った願いごとを
御座なりにし、?
嘘?を付いてまで、湯浅 比呂美と下校したことを自らの目で見ていたのだ。
そして、その前には昼休みに乃絵は湯浅 比呂美が昼食を摂っている場所へと赴き、一緒に食べる行為を勝手に始めるという奇怪な行動を見せる。
これには理由があり、眞一郎との?
約束?を果たす為の行動で、湯浅 比呂美と仲良くするという建て前があったからだ。
その昼食場所で行われたのは、湯浅 比呂美とのお弁当交換。
最初、比呂美は乃絵の突然の来訪にキョトンとした表情を見せるが、自然と彼女とのやり取りを遂行した。
これは眞一郎に嘘を付いた?
一種の償い?であるのだろう。
比呂美は乃絵にタコのように赤く茹で上がった色をしているウインナーを渡そうとするが、乃絵は拒絶し、
隣の瑞々しいトマトが欲しいと訴える目が窺われたのを感じた比呂美はそれをあげた。
乃絵はある意味、ヴェジタリアンなのかもしれない。
経緯の流れは実に単純だが、経緯の中に存在する過程は複雑になっていた。
その後に起きるのが、放課後の嘘の出来事。
乃絵は、赤く茹で上がった色をしたウインナーのことを、?
嘘の塊?として認識していった、という訳である。
その結果、乃絵は眞一郎の自宅へと赴き、花形の踊りの稽古をしている最中にも拘らず、眞一郎宅の庭で一緒にご飯を食べようと
言い出したのである。
そこで繰り広げられたのは、誤解の溶解。
『 眞一郎は飛べる! ・・・気高い涙を流せる人だわ、眞一郎は! 』嘘のウインナーの代わりに、乃絵は眞一郎の頬を舐めた。
なんでも、涙を舐めるというのは、亡くなった祖母が涙を貰う時にした行動であるというのだ。
・・・それはまるで、真実の涙を貰う儀式のようなものであった。
【 出逢い=微妙 ?想いは測 〔量〕 れない? 】
眞一郎と愛子の二人は、単純でも複雑でも言い表すことが出来ない、何とも微妙な出逢いの連続を繰り広げていた。
眞一郎は愛子と友人の三代吉との交際が上手くいっているものと確信していて、愛子は逆に三代吉のことを御座なりにし、
眞一郎のことを想い続けていたのだから。
この微妙な関係が示す未来は、やはり微妙なのであろうか。
今川焼き屋の 「あいちゃん」 にて、眞一郎と愛子が二人きりになった時、事態は微妙に変化し始めた。
愛子と恋人である三代吉は、愛子の変化に気付いていた。
それは、今まで着たことがない?
地味なセーター?を着ていたこと。
何故、そんなモノを買ったのか、疑問に思った三代吉は愛子に訊ねるものの、彼女からの答えは全くの?
御座なり?だった。
つまり、その答えから逃れ、話題を変えてしまっていたのだ、自然と。
『 あ…と、アンタもセーターくらい買ったら? 近頃、いつもその服じゃない? 』その言葉に三代吉は、そこら辺で買うセーターではなくて、?
手編み?のセーターが欲しいと愛子手作りのセーターが欲しいと
言い出した。
返答は…。
『 ・・・・・・・・・いいよ・・・・・・・・・。 』三代吉は歓喜に震え、体全体で大いに喜んだ。
これが、微妙の始まりだった。
「あいちゃん」 にて二人きりになった眞一郎と愛子。
眞一郎は、何やらカウンターに目新しい袋を見つけると、
『 セーターか!? 』 と興味津津となり、それを開けようとする。
愛子は
『 うん・・・。 』 と言いながらも頬を赤く照らし、慌てふためいた様子で袋の元へ駆け寄った。
そして、愛子は開けようとする眞一郎の行動を阻止する為、奪い返し、大事そうに抱え込んだ。
『 いいなぁ・・・。 三代吉、幸せ者だよなぁ?! 』全てはこの眞一郎の一言から事態を急変させていった。
愛子は眞一郎の体を一部始終、見終えると彼に頼みごとをするのであった。
『 眞一郎… (三代吉と) 肩幅、同じくらいだよねぇ? …測らせてくれない? 』眞一郎は本人に頼めばいいじゃないか、と困惑しながらも、愛子の進行に合わせてしまう。
すると、そこへ突然、お馴染みの声音が 「あいちゃん」 に響き渡った。
『 お?い、愛子ぉ?! 』三代吉だった。
眞一郎は三代吉を中に早く入れようと、即座に席を立とうとするが、愛子は眞一郎の両肩を押さえ付け、彼の行動を抑え付けた。
『 開けないで・・・!!! 』え・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!?
眞一郎は何が起こったのか全く解らないまま、愛子に抑え付けられたまま、驚きの表情を隠すことは出来なかった。
心は曇天雨模様。
外の風景もまた、相変わらずの曇天雨模様であった…。

(終)<感想>少女三角形の形がいよいよ、形成され始めてきましたね。
三角形といっても、それぞれの行き着く先は眞一郎ただ一人。
いわば、眞一郎がその三角形の?頂点の先にある頂点?という立場と言った所ですね。
かしましの少女三角形とは全然違う展開に、もうメロメロです。(ぇ
ふぅ?、休みになると、記事も頑張っちゃいますね!
アブラムシの唄も収録サントラ ⇒
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次回の真実の涙 (true tears) は…。

『
それ…なんの冗談? 』 (By 仲上 眞一郎)
ついに、眞一郎に?選択?の時が迫る!